エンジニアがどんな情報を求めているのか、非エンジニアの採用担当者にとっては、理解をもって進めていくのが難しい領域の一つだと言えます。専門知識が不足していると適切な求人票作成ができず、またせっかくの候補者を最適にアトラクトできません。とはいえ、専門分野ではないので、キャッチアップにも限界があるのも、また事実でしょう。
そこでQiita Jobsでは、2021年7月21日に「内定承諾率を上げる!エンジニア採用のアトラクト戦略」というタイトルでセミナーを実施しました。こちらでは、元エンジニアの経歴を持ち、現在は人事部でエンジニア採用を担当するSansan株式会社の高橋洸氏が登壇され、エンジニア採用を行うために知っておくべきエンジニアリングにまつわる知識をお役立ち資料「エンジニアを惹き付けるための基礎知識」を元に、解説が行われました。
本記事では、こちらのセミナー内容についてレポートします。エンジニア採用について課題を感じている方は、ぜひご覧ください。
某中堅SIerにて3年間パッケージ開発に従事。2016年にSansanへソフトウェアエンジニアとして入社し、新規サービス立ち上げなどに携わる。2018年から人事部中途採用グループにてエンジニア採用を担当。現在は評価制度の設計やシステム開発にも従事する。最も影響を受けた技術書はスティーブ・マコネルの「ソフトウェア見積り」
高橋:もう一つ、「広い技術」「アジャイル開発」といった、一見エンジニア受けが良さそうな論点についても、最近では他の会社でも取り組みが進んでいるので、差別化にはつながらないことになります。
このようなケースに陥らないように、対話の精度を高める必要があります。そのためには、以下の3ステップが対策が挙げられます。
また欲求の分類として、現場に対する欲求としては「技術」「体制」「事業」「文化」「待遇」が、将来に対する欲求としては「キャリア」そのものが、それぞれ挙げられます。ここから、これらを細かく見ていきます。
髙橋:では、どんな対話をしたら良いのかということですが、これは会社さんによるかなと思います。それぞれの強みを把握して、それをうまく伝える方向にもっていけるような ストーリーを設計すると良いでしょう。
具体的な欲求に対するアトラクト方法としては、まず、日々の現場のエンジニアからの情報収集が大事です。「現職がこういう体制ということは、このポジションの体制の話は有効そうだな」とか、「こういう技術的チャレンジに興味があるようだから、あのプロジェクトの話をしてあげよう」といったところです。
また、誰から伝えさせるかを考えるのも効果的です。技術の深い話であれば現場メンバーに出てもらうと良いでしょうし、体制の話であればマネージャーなどに出てもらうのが良いでしょう。 そして、以下の通り、潜在的な欲求を見つけてあげると良いでしょう。
高橋:あとはプラスアルファとして、志向や欲求をチェックシートとして選考前に答えてもらって面接時に面接官や選考担当に共有したり、現場メンバーにも回答してもらってアトラクトタイミングでマッチする人を当てる、さらにはそのデータを溜めて「こういう回答だったらこういうアトラクト」とパターン化することも、効果的でしょう。
--チェックシートって、例えばどのような項目があるのでしょうか?
高橋:非常にざっくりですが、例えば今後のキャリア像としてエンジニアの職種やチームリーダーといった職責、生かしたいスキルや身に付けたいスキルの内容、好む環境条件などの項目を並べています。この内容に従って、面接で深めていきます。
--もう一つ、欲求をヒアリングするとなると、相応の知識がないと難しいかなと思ったのですが、どれくらいの知識があると良いのでしょうか?
高橋:エンジニアから見て「この人技術が分かっていそうだな」と思われるか否かで、話し方が変わってくると思います。分かっていなさそうだったら、そもそもあまり開示してくれない可能性があるので、分かっていそうな雰囲気を出すのが、一つのポイントだと思います。ある程度の部分で説明できるようになれば、「社内のエンジニアが、より詳しく説明します」という感じでつなげれると思います。
今回は「内定承諾率を上げる!エンジニア採用のアトラクト戦略」というテーマで、エンジニアのキャリアや欲求への理解を深め、また潜在的な欲求を把握するためのアプローチについて解説がなされました。今回のセミナーで高橋氏がおっしゃっていたように、それぞれの会社の強みを把握・理解し、それをうまく候補者へと伝える方向にもっていけるような ストーリーを設計することが大事になります。
取材/文:長岡 武司